<21> 小児ぜんそくの治療 〜吸入薬で炎症抑えて〜

 ぜんそくの治療は発作時と発作予防の二つに分けられます。発作は命にかかわる危険な場合もあり、速やかな治療がとても重要です。それほど重くない発作でも早く楽にしてあげたいというのがご両親の願いでしょう。

 ぜんそくの発作は夜に悪化することが多いので、あらかじめ発作時の飲み薬や吸入薬、張り薬などをもらっておくと良いでしょう。それらの薬を使っても、苦しくて眠れない、食べ物を受け付けないといった症状が続く場合には速やかに受診する必要があります。

 何度も発作を起こす場合には発作を治すだけではなく、予防する治療が必要になります。ぜんそくの治療は“アレルギー性炎症”を抑えることが重要で、成人では炎症を抑える作用が最も強力な吸入ステロイド薬が主な治療法です。この薬の副作用を心配される方も多いのですが、小児での安全性も認められています。日本小児アレルギー学会の小児ぜんそく治療ガイドラインでは、年長児のぜんそく予防治療には早期からの吸入ステロイド薬使用が推奨されています。

 ステロイド以外にはインタール吸入薬やロイコトリエン拮抗(きっこう)薬(オノン、シングレア、キプレス)、テオフィリン製剤(テオドール、テオロングなど)が発作予防に用いられます。いずれも炎症を抑える作用を持つ薬剤であり、これらの予防薬の中からそれぞれの子にあった薬剤を選択し、時には組み合わせて使います。
 発作時に用いられる吸入薬(ベネトリン、メプチンなど)は一時的に呼吸を楽にする効果はありますが、炎症を抑える作用はないので発作が多いときは必ず予防薬と併用します。

 日常生活の注意点としては、ほとんどのぜんそく児はハウスダスト、チリダニにアレルギー反応をもっていますので、日常の掃除などダニ対策が大変重要です。しかし多くの場合、高価な防ダニ寝具や器具を買いそろえる必要はありません。毎日の服薬や発作の状態を記録するぜんそく日誌も、より良い治療法の選択や生活指導を行う上で欠かせません。

 適切な予防治療を継続することにより、ぜんそくの子どもたちの多くは、健康児と何ら違いのない生活を送れるようなります。発作のない状態を維持することが“ぜんそくを治す”ことにもつながるのです。

(高橋豊・2003/10/08 北海道新聞)
 

<22> アトピー性皮膚炎〜清潔に保つことが大原則〜

 肌のすべすべした赤ちゃんも生後1カ月くらいになると、皮膚の脂肪分泌が多くなるため、ほっぺたや胸に大人のにきびのような乳児湿疹(しっしん)ができます。この湿疹をアトピー性皮膚炎と勘違いして心配するご家族がたくさんいます。

 アトピー性皮膚炎とは、遺伝的なアレルギー体質が関係して、かゆみの強い湿疹を繰り返す皮膚炎のことです。乳幼児で2カ月以上湿疹が続く時には、その可能性があります。
 治療の大原則は、清潔に保つこと、引っかかないこと、保湿剤やステロイド軟こうを適切に使用することです。

 皮膚を清潔に保つには、手を使って泡立てたせっけんでやさしく洗います。きれいにしようとしてタオルやガーゼでこすり過ぎるとかえって悪くなります。洗った後はすばやくワセリンなどの保湿剤を塗って皮膚の水分を保ちます。湿疹が悪化したときは、適切な強さのステロイド軟こうで炎症を抑える必要があります。副作用を心配される方がいますが、使用方法が適切であれば心配はありません。かゆみが強いと無意識に引っかいて湿疹を悪化させるので、かゆみを抑えるような飲み薬をうまく利用することも重要です。

 食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因となることもありますが、食事制限が必要になることはめったにありません。血液検査で食物にアレルギー反応が出たからといって、必ずしも制限する必要はないのですが、同じ食物でいつも湿疹が悪くなる場合には食事制限が必要になります。
 ただし、食物制限をする場合には必ず小児科医の指導を受けてください。乳幼児期に食べられない食物でも、大きくなると食べられるようになることが多いので、あまり心配しないことです。

 アトピー性皮膚炎が良くならない場合には、身の回りの化学製品に気をつける必要もあります。入浴剤や洗濯物の漂白剤・柔軟仕上げ剤をやめたり、洗濯洗剤を合成洗剤から植物性の粉せっけんに変えることで良くなることもあります。                


(渡辺徹・2003/10/15 北海道新聞)
 

<23> 食物アレルギー〜過度の制限 発育に悪影響〜

 食物アレルギーとは、特定の食物を食べるとさまざまな症状を表す病気です。子どもでは、じんましん・アトピー性皮膚炎などの皮膚症状、下痢・嘔吐(おうと)などの消化器症状、ぜんそく発作などの呼吸器症状が主なものです。

 じんましんは血液検査で原因食物を調べることは困難ですが、特定の食物で明らかに症状を繰り返す場合にはその食物を食べないようにする必要があります。アトピー性皮膚炎は卵・牛乳・小麦などで悪化することがありますが、卵以外の食物で制限が必要なことはまれです。

 消化器症状では下痢や嘔吐を起こしますが、牛乳による下痢はほとんどが、牛乳に含まれる乳糖を消化する酵素が欠損している乳糖不耐症によるもので、これは食物アレルギーではありません。食物がぜんそく発作の原因となることは少ないのですが、日本ではそば、欧米ではピーナツが要注意とされています。

 最近、口腔(こうくう)アレルギー症候群(OAS)が問題になっています。これはリンゴやモモなどの果物や野菜を食べると、口内やのどがかゆくなり今まで食べていた食物が食べられなくなる病気です。OASのほとんどはシラカバなどの花粉アレルギーが原因で、鼻炎や結膜炎の症状を起こすようになった後、何年もたってから症状が出てきます。OASになると原因食物を生では食べられませんが、ジャムやジュースなどの加工品は食べられます。
 普段はアレルギー症状のでない食物でも、食べてすぐに激しい運動をするとじんましんや血圧低下などの症状が出ることもあります。

 乳幼児期の食物アレルギーは多くの場合、いずれ食べられようになることが多いものです。子どもでは、不確実な食物アレルギーの診断で不必要な食物制限をしたり、子どもの成長を考えずに過度の食物制限をしたりすると発育に悪影響を及ぼすことがあります。食物制限は必ず小児科医の指導を受けておこなってください。

 食物成分は薬に含まれていることもあります。卵アレルギーでは炎症をおさえる塩化リゾチーム、牛乳アレルギーでは整腸剤などに注意する必要がありますので、食物アレルギーのある方が薬をもらうときには小児科医に良く相談してください。

(渡辺徹・2003/10/22 北海道新聞)
 

<24> アレルギー性鼻炎〜ぜんそく患者の5割併発〜

 アレルギー性鼻炎といえばスギ花粉症に伴う鼻炎が有名です。スギ花粉の飛散時期である2〜3月には、毎年テレビなどでさかんに報道されるので耳にする機会も多いでしょう。北海道ではスギ花粉症はほとんどみられませんが、例年4〜5月にはシラカバ花粉症によるアレルギー性鼻炎が多くみられます。シラカバ以外の花粉ではカモガヤ(6〜7月)、ヨモギ(8〜9月)が原因となることが多く、花粉以外ではダニやネコ、イヌもアレルギー性鼻炎の原因となります。

 アレルギー性鼻炎はくしゃみや鼻水、鼻づまりが主な症状です。治療には抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤の内服薬や点鼻薬、ステロイド剤の点鼻薬などが使われます。花粉症による場合は悪くなる季節が決まっていますので、1カ月前から予防的に治療を開始すると良いでしょう。

 いままでアレルギー性鼻炎は大人になってからなる病気という印象があったのですが、最近では乳幼児期にも多い病気であることが分かってきました。子どもは、気管支ぜんそくがあるとアレルギー性鼻炎も一緒に起こしていることが多く、2001年に北海道小児喘息(ぜんそく)研究会が道内4千人以上の小児ぜんそくの患者さんにお願いしたアンケート調査では、50%の患者さんがアレルギー性鼻炎になっていました。

 この数年、上気道から下気道まで、つまり鼻から肺の気管支まで粘膜はずっとつながっているので、その連続した粘膜でおきている病気は一つのものとしてとらえようとする考え方が広まってきました。たしかに子どものアレルギー性鼻炎(鼻粘膜の病気)と気管支ぜんそく(気管支粘膜の病気)との合併は多いので、生活の質(QOL)を良くするためには気管支ぜんそくとアレルギー性鼻炎の両方に適切な治療を続けることが重要になります。子どものアレルギー性鼻炎は慢性副鼻腔(びくう)炎や滲出(しんしゅつ)性中耳炎を悪化させる原因にもなります。このため気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎の子どもの治療には、小児科医と耳鼻咽喉科医の協力が大切になります。


(渡辺徹・2003/10/29 北海道新聞)
 

<25> 川崎病の症状〜高熱続き手足に発赤やはれ〜

 「川崎病」というと「川崎市の公害病ですか」と質問されることがあります。川崎病は1967年に、現在の日本赤十字社医療センターの川崎富作博士が、それまで知られていた病気と違う症状や経過がみられた50人の患者を「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS)」と名付けて報告したのが初めてです。今では世界的に「川崎病」が一般的な病名になりました。当初は日本からの報告がほとんどでしたが、最近では多数の患者が世界60カ国以上で確認されています。

 川崎病は主に4歳以下の子どもがかかる病気で、日本では2000年までに約17万人の報告があります。少子化傾向でも、年間約6千人の発生が続いており、罹患(りかん)率が明らかに増加しています。最近の統計では、子供200人に約1人の割合で、川崎病にかかった人がいることになります。

 川崎病の主な症状を挙げると、[1]40度近くの発熱があります。多くの場合5日以上続きます[2]体にいろいろのタイプの発疹(ほっしん)がみられます。BCGの注射部位が赤くなるのが特徴的です[3]手足に発赤やはれができます。皮膚がテカテカとむくみ、回復期にはつめとの境目から膜状に皮膚がはがれます。川崎病に特徴的です。
 また、[4]目やにはなく、白目が赤くなり血管が鮮やかに見え、目が充血します[5]唇が赤くなり、時に出血がみられ、舌にはいちご舌とよばれる赤いプツプツができます。このような目と唇の赤さは「川崎病顔貌(がんぼう)」と呼ばれ、一度見たら忘れることのできない印象的なものです。
 頻度は低いのですが、[6]首のリンパ節がはれます。ひどくなると痛みのため首をまわすこともできません。
 以上6症状のうち、5つを満たせば川崎病と確定できます。また4つでも心エコー(超音波)検査で冠動脈の変化をみとめれば川崎病と診断できます。

 川崎病は原因不明の全身性血管炎ですが、特に心臓に酸素や栄養を運ぶ冠動脈に強い変化や拡張、瘤(こぶ)などが現れます。早期診断・治療は、心血管障害を残さないためにも当然必要なことです。症状が出てから7日以内に治療を受けられることをおすすめいたします。疑わしい場合には、早めに近くの小児科を受診してください。
                    


(太田八千雄・2003/11/05 北海道新聞)
 

<26> 川崎病の治療〜γグロブリン併用が有効〜

 川崎病は何の前触れもなく急に熱が出て、6つの症状が表れます。1歳前後の発生が最も多く、症状がほぼすべてそろうため診断は容易です。しかし3〜4カ月未満の赤ちゃんや8歳以上の学童は、症状がそろうまで時間がかかる場合もあり、診断が難しく重症になることもあります。
 川崎病は適切な治療により、10日ほどで症状が治まる病気です。しかし中には、熱が長期間続き、冠動脈に瘤(こぶ)ができる人もいます。γ(ガンマ)グロブリンなどでの治療が必要ですが、川崎病はいまだ原因不明なため根本的な治療法がないのが現状です。

 γグロブリンとは、私たちの血液中に多量に含まれている免疫グロブリン(抗体)のことで、感染から体を守る大切なものです。以前はアスピリンという熱冷ましの薬を使う治療でしたが、1984年にγグロブリンの併用が川崎病に有効であることが分かり、治療に関して大きな進歩がありました。
 当初は子どもの30%前後に冠動脈瘤(りゅう)などの心血管障害が発生していましたが、γグロブリン併用療法が始まり約7%に減りました。今年から認められたγグロブリン超大量療法では心血管障害率はさらに2〜4%まで減少しています。

 子どもの85%は投与後1、2日で解熱し、心血管障害を残す人はまれです。しかし患者の15%ぐらいはγグロブリン不応例といって、なかなか熱が下がらず、冠動脈拡張・瘤などの障害発生の危険があります。その場合は別の治療が必要となります。

 γグロブリンが効く場合、おおよそ1〜2週間で手足の指先から皮膚がむけて回復期となり、退院できます。その後を遠隔期といい、心臓の冠動脈障害が残っているかどうかで治療の方法が変わってきます。90%以上の人は冠動脈後遺症を残しません。2002年度に日本川崎病研究会が作成したガイドラインでは、ほぼ高校生くらいまで経過観察を続けることを推奨しています。

 しかし川崎病については、未解明な点も多く、最終的には本人や保護者と医師が十分相談の上、判断することが望ましいと考えています。障害の残った人は、小児循環器科などの専門医による治療および経過観察が必要となります。


(太田八千雄・2003/11/12 北海道新聞)
 

<27> 川崎病の課題〜成人後、内科へ引き継ぎを〜

 川崎病には解決しなければならない問題があります。
 まず、原因がいまだ不明です。日本で過去3回、大流行があり、数カ月で全国に広がりました。しかし、川崎病の入院患者から他の入院患者に感染したという確実な報告例はなく、原因となるウイルスや細菌も見つかっておりません。

 川崎病では「のどが赤く炎症を起こす」「首のリンパ節がはれる」などから、原因となるものが「のど」から侵入してくると考えられます。ただ、熱などの症状が出た時は、原因となるものがすでに破壊されているか、現代医学では発見できないため、証明はできていません。

 一方、大人になってから、川崎病にかかる人が極めて少ないことで、大人は自然に免疫を獲得していると推測されます。これらの事実を考え合わせると、川崎病の発症に「感染」がなんらかの形で強くかかわっていると考えられています。

 次は、患者が大人になった時の問題です。冠動脈障害があった人は、成人になれば内科へ移ることになります。残念ながら、小児科医は内科医へ「川崎病」の正確な知識と情報を伝えてきたとは言い難く、連係も不十分です。

 そうした問題意識から2000年に、川崎病にかかわってきた小児科医が中心となり「北海道川崎病研究会」(代表・浜田勇手稲渓仁会病院小児循環器科部長)を設立しました。この会は、全国で初めて内科医が多数参加し、小児科医と一緒に川崎病遠隔期の経過観察や検査計画を考えていく、新しい試みをしています。成人になった人や川崎病の子供をかかえ悩んでいる保護者の方は、当研究会へご相談下さい。

 最後に、同会などが配布している「川崎病患者カード」について説明します。カードには川崎病になった時の状態や治療の経過が記載されています。高血圧症や狭心症などににかかった時、内科医たちへ情報提供するためのものです。
 川崎病にかかった人は動脈硬化症になりやすいのか、また重症化しやすいのか、この点はいまだ不明です。そのためにも「カード」に記載されている情報は、川崎病にかかった人が将来どうなるかを解明する上で重要な資料になります。病院などにカードがありますので、本人が大切に保存していただきたいと思っています。

(太田八千雄・2003/11/19 北海道新聞)
 

<28> 救急医療〜コンビニ感覚の受診増加〜

 ここ数年、小児科の夜間救急医療現場は、救急というよりも時間外診療として訪れる患者が多くなっているようです。このため混雑し、急を要する重症な患者に対する迅速な処置が取りづらくなっています。担当医師も休憩がとれず翌日も平常通りの診療となりますから、疲労が蓄積しているのが現状です。国を挙げての積極的な取り組みが求められています。

 札幌市で来年から、年末年始などの休日当番医を増やす、新しい救急医療体制が始まります。小児科医だけで小児一次救急を受け持っている地区は、道内では札幌市や函館市など数カ所です。札幌の夜間救急センターは、土曜日、休日の午後7時−午前零時を小児科医2人で担当することにし、混雑緩和を図ろうとしていますが、小児科以外の医師の応援も必要になると思われます。

 子どもが減っているのにもかかわらず、救急医療の利用が増える背景には、[1]女性の社会進出で平日の昼に医療機関にかかれない[2]核家族化による育児不安[3]少子化で子どもを大切にする[4]コンビニ感覚での受診が増えている−などが挙げられます。そのような社会環境の変化がある一方で、小児科医の減少・高齢化など医療環境も変わっており、多くの方の要望に応えられる体制づくりは、実際には困難です。

 救急医療を利用する人は、長い待ち時間の解消、小児科医による24時間体制の診察、近くへの救急医療機関設置、電話相談による医療情報の提供などを要望しています。

 一方、救急医療受診者の症状を調べた報告によると、発熱、嘔吐(おうと)、咳(せき)、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難、けいれん、下痢などが多く、80%以上が軽症患者だったといいます。
 すぐ受診してほしい症状には、[1]意識がはっきりしない[2]呼吸が速くて苦しがっている[3]口や手足の先が紫色(チアノーゼ)になっている[4]強い痛みがあってぐったりしている[5]頻繁に嘔吐する[6]けいれんが15分以上続く−などがあります。子どもの機嫌が良く、顔色もふだんと変わらず、食欲があるような場合は、翌朝まで様子を見てよいでしょう。

 通常の時間帯では待ち時間が長い、お父さんが会社から帰ってきたので受診した、1人診てもらったのでついでにもう1人診てほしい、というような救急利用は“困ったさん”ということになります。

(古山正之・2003/11/26 北海道新聞)
 

<29> 発熱とけいれん〜自宅での処置が大切〜

 発熱はよくある訴えの一つです。親は高熱が脳に影響を起こすのではないかと心配し、怖がります。しかし、脳疾患など特殊な場合を除いて、40度位の熱が続いても脳に異常は残しません。高熱でも機嫌が良く、食欲がある時はあまり心配することはありません。逆に熱がそれほど高くなくても、ぐったりしていたり、顔色が悪いときは重い病気であるケースがあります。
 ただ、3カ月未満の乳児は、発熱以外に特異な症状がないのにもかかわらず、重症になることがあるので注意してください。

 高熱の出始めは、顔色は青白く、体が熱くても手足が冷たいことがあります。この時は、寒気のある時で、体を温める必要があります。手足が温かく、顔色が赤みを帯びているときは、普段程度の衣類、または薄着をさせても良く、部屋の空気を入れ替えると気持ちが良くなります。
 発熱が続くと水分の補給が大切になります。お子さんが嫌がらなければ、解熱効果は少ないが冷やすことも必要です。額、頚部(けいぶ)、脇の下、ももの付け根などを冷やしてあげてください。

 熱によるひきつけは、通常6カ月から5歳くらいまでの小児に発症します。熱は38度以上のことが多く、子どもの2〜4%は7歳ぐらいまでに一度は経験していると言われています。しばしば遺伝の傾向がみられ、家族歴があることが多いといわれております。ひきつけ自体は脳に障害を及ぼすことはなく、両親、きょうだいに熱性けいれんのある子は発症しやすいといわれています。
 ひきつけの多くは病院外で起こるので、自宅での処置が大切です。まず、あわてずに衣服、特に首のまわりをゆるめます。けいれんが15分以上続いたり、けいれんに左右差が見られたり、けいれん後麻痺(まひ)があったりする場合はすぐ受診する必要があります。

 頭を体よりやや低くし、脇を下にして横に向け、頭をそり気味にさせます。歯で舌をかまないように、物を口の中に入れると、呼吸障害を起こすことがあるのでやめましょう。けいれん止めの座薬は、熱性けいれんを40%減少させたとの報告もあります。ひきつけを起こしたことのある家庭では常備薬として用意しておくとよいでしょう。


(古山正之・2003/12/03 北海道新聞)
 

<30> せきとぜんめい〜症状や時間帯 原因ごとに特徴〜

 せきの多くは、かぜや気管支炎など呼吸器感染症によって起こることが多く、一般に7〜10日くらいで軽くなります。長引くときはもう一度受診しましょう。

 せきにはコンコンという乾いたせきと、ゴホンゴホンとたんがからんだ湿ったせきがあります。主に、乾いたのは上気道炎、湿ったのは気管支炎や肺炎によって起こります。気管支ぜんそくのせきは日中に比べ夜から早朝にかけてが強く、多くはゼーゼーというぜんめいを伴います。気管支炎のせきは日中よりも夜の方が強くなります。

 副鼻腔(びくう)炎やアレルギー性鼻炎で、鼻汁がのどに下って出るせきは湿っていて、起床時が一番激しく、夜より日中の方が強くなります。乾いたせきが長引き、睡眠中になくなる時は、心因性と考えられます。このように原因によってせきの状態や時間帯に特徴が見られます。
 特殊な例として、顔を真っ赤にして激しく短いせきを続けたのち、ヒューと音をたてて一気に息を吸うせきは百日ぜきでみられます。

 声がかれ、「犬がほえるような」「トドの鳴き声」と表現されるせきで、息を吸うときにぜんめい(吸気性ぜんめい)を伴うものには仮性クループ(喉頭蓋(こうとうがい)炎)があります。3〜4日ぐらい、夜になると症状が悪くなり、多呼吸や胸がへこむ陥没呼吸などの呼吸困難を伴うことがあるので、注意が必要です。

 ぜんめいを起こす代表的な疾患は、息を吐き出す時に呼気性ぜんめいがでる気管支ぜんそくです。同じようなぜんめいで乳児が冬にRSウイルス感染で起こる細気管支炎は、ぜんそくの初回発作と区別することが難しく、呼吸困難で入院することが多い病気です。最近は未熟児の一部に、RSウイルスに対する抗体の投与が認められ、予防に効果を上げています。

 せきはのどや気管の異物やたんなどを排出しようとする防御反応の一つです。やみくもに止めればよいものではなく、たんなどが出づらくなり細い気管支につまると呼吸が苦しくなります。のどは乾燥に弱く、特に冬は暖房で室内は乾燥しやすいので洗濯物を干したり、加湿器を使って湿度を60%ぐらいに保ったりしてください。せきがひどいときは、室内を涼しくし、換気を繰り返して、上半身を少し高めにして寝かせてあげればよいでしょう。せきをしている子どもの前でのたばこはやめましょう。


(古山正之・2003/12/10 北海道新聞)