児童虐待のニュースが新聞に載らない日がないといっても言い過ぎではないほどに、最近の子供たちは大人からの暴力に、まるで無防備にさらされています。記事になるのは、既に悲惨な結果になってしまったときです。そこに至るまでの子供たちの肉体的、精神的苦痛は、どんなにか大変なものだったのか想像もできません。
幼い子供を殴打したり、突き飛ばしたり、つねったり、やけどを負わせたり、食事を与えない、などの虐待が行われています。かわいいわが子に一体なぜ、死に至るまでの暴力が振るわれるのでしょうか。
お漏らしや口答えなどのささいなことや、未熟児で長期入院していたため子供とのスキンシップが少なかったり、その後の養育が難しいときが、きっかけになりやすいようです。不用意に強く揺すったり、高い高いをしたときなどに頭蓋(がい)内出血を起こして「揺さぶられっ子症候群」になることもあります。
また、援助交際と称して子供たちを金銭と性の世界に引きずり込むのも大人の暴力です。アフリカなどの発展途上国では、子供が銃を持ち兵士として戦場に狩り出されたり、エイズまん延の元となる売春に従事させられたりもしているのが現実です。
自分より弱いものを力で支配する大人の論理の前に、子供たちはあまりにも無力です。こうした子供たちの悲惨な状況が改善されることを願ってできたのが、児童の権利に関する条約です。
こどもの権利条約は、1989年国連総会で採択され、わが国では九四年に批准されました。条約は、「親による体や心への暴力や虐待、放任などから子供を守り、家庭環境を奪われた子供は、国の保護や援助を受ける資格がある」としています。
虐待のない社会では、大人も子供も生き生きと生活できるでしょう。自分勝手な大人にだけ都合の良い社会ならば、子供にとって豊かで活気ある未来へと発展しないでしょう。悲しい事件を起こさないための努力が今、必要なのだと思います。
もし育児での悩み事や子供への暴力や虐待が起きたなら、ためらわずに、近くの小児科医院に相談してください。医療機関と地域の保健師らが連携する支援(育児支援ネットワーク)もあります。必ずや最良の解決の道が見つかるはずです。
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